Storm Last Night 津田直傷、汚れ、殆どありません再び踏んだ彼の地は、雨を含んだ土のにおいがしていた。 ―プロローグより風景が信仰の対象だった古代を、アイルランドに辿る旅。自身の記憶も遡りながら、キリスト教以前の、世界の原点に触れる。大西洋に浮かぶ島々の断崖で、嵐が過ぎ去った海岸線に残された聖跡を渡り歩く。海鳴りが納まるころ、嵐は去っていった。僕は自らの心音に安堵し、泥炭の炎に身体を暖めた。すでに雨は上がり、海は凪ぎはじめている。過ぎ去った時間の永さは分からない。覚えていることと言えば、地面に渦巻き模様が幾つも刻まれ残ったことだ。(津田直「Storm Last Night」より)